arrows MAGAZINE

2021.03.19 Fri

arrowsマニア情報局 第249回

「5G」と出たのに5G通信ができない謎に迫る

arrows lifeをご覧の皆様、「せう」です。次回(第250回)は、重大な発表をします。ちょうど250回で何が起こるのか……。お楽しみに?


5Gと出ているのに5G通信ができない……!?

日本国内で5G(第5世代移動通信システム)を使った携帯通信サービスが始まって1年たちます。1年間でエリアはある程度広がり、5Gスマートフォンのアンテナピクト(電波状況のインジケーター)に「5G」と出る場所も増えてきた印象です。

「5G」と出て、「お、これはもっと高速に通信できるのか……!」と思ってデータ通信を開始すると「4G+」とか「4G」、つまりLTE通信になってしまうことが少なくありません。ある意味で「肩透かし」ですよね……。

なぜ、このようなことが起こるのか、改めて解説していきます。

今の5GネットワークはLTEネットワークに依存している


今の5Gネットワークは「ノンスタンドアローン」です(出典:NTTドコモ

現状の5Gネットワークは「普及期」です。それもあり、ネットワークを構成する機器の一部をLTEと共用しています。このネットワーク構成はLTEから“自立”していないため「ノンスタンドアローン(NSA)」と呼ばれています。

NSAの5Gネットワークでは、LTE通信を使って5G通信を制御しなければなりません。この制御で使われるのは「eLTE(エンハンスドLTE)」と呼ばれる規格です。簡単にいえば、5Gとの協調を前提にしてLTEの仕様を拡張したものです。

5Gの制御に使われるeLTEは、5G通信の“きっかけ”となることから一般的に「アンカーバンド」と呼ばれます。

アンカーバンドを検出しても5Gで通信できるとは限らない


あくまでも「通信中の規格」で表示するように4キャリアは合意しています(出典:総務省資料<PDFファイル>

NSAの5Gネットワークに対応する端末は、一般的にアンカーバンドを検出するとアンテナピクトを「5G」とします。ただ、5G用の基地局(アンテナ)とLTE用の基地局(アンテナ)は“全く”同じエリアカバーができるとは限りません。簡単にいうとアンカーバンドがあっても5Gで通信できるとは限らないのです。

単純にアンカーバンドを検出したら「5G」と出すようにすると「表示は『5G』なのにLTEでデータ通信をしている」という状態になり得ます。少し強引な気もしますが、場合によっては「優良誤認」となってしまいます。

実はこの問題、5Gに向けた環境整備の過程で問題として浮上していました。そこで総務省と大手キャリアは検討を重ねた結果「アンカーバンドを検出したら、待受時のアンテナピクトは5Gにする」「アンカーバンドのある場所で実際のデータ通信がLTEで行われる場合はピクト表示を『4G』に切り替える」という2点で合意に至りました。そのため、大手キャリアが販売する5G端末はこの合意に基づく仕様となります。

これが、5Gと出ているのに実際に通信をすると「4G+」「4G」表示になってしまう問題の“正体”です。

この問題を解決できるのは、LTEネットワークに依存しない「スタンドアローン(SA)」構成への移行です。早ければ2021年度からSA構成への移行が始まるので、もうしばらくの辛抱ですね……。