arrows MAGAZINE

arrows研究所

2016.07.19 Tue

arrows研究所 第55回

新製品「arrows SV F-03H」のアルミフレームにズームイン!

どうもI川です。
今回は、arrowsの開発に携わった方々に開発秘話をお聞きする「arrows X」の第3弾です。

この夏発売のモデル「arrows SV F-03H」について、
商品企画の吉澤さんと、開発リーダーの渡邉さんにインタビュー。
猛暑に負けない熱さを胸に秘めたお二人に、クールに語っていただきました。

実は、取材の前からこのモデルには興味津々だったんですよ。
というのも、「arrows SV F-03Hは、アルミフレームが凄いらしい」という
ウワサを耳にしていたから。
情報の真偽のほども、お二人にしっかりうかがってきました!

開発にかけた ユーザーへの思い

ミドルレンジながら、この上質感、この高級感!

I川:まず、今回のarrows SV F-03H(以下F-03H)の特徴を教えていただけますか?
ミドルレンジのモデルとして開発されたと聞いていますが。

吉澤氏:そうです。「見た目は大事。カメラはよく使う。基本機能はしっかりしていて欲しい。もちろん価格は重視する。」というお客様のニーズにどう応えるかが、テーマでした。ですので、ポイントは、上質なデザイン、思い出を綺麗に撮れるカメラ、電池の長持ちも含めた基本機能の充実、の3つです。

スマートフォンは毎日使うものですから、見た目って大事ですよね。
そこで第1に、より上質感、高級感のあるデザインを目指しました。鉱石をイメージした質感やカラーリングもそうですし、アルミフレームの採用で上質感にはとことんこだわりました。

I川:確かにかっこいいです!高級感があります!

吉澤氏:第2のこだわりがカメラです。「思い出をきれいに残したい」というお客様のニーズに、フラッグシップのような最高スペックではないですが、ちゃんと綺麗に撮ることができるレベルのスペックでお応えしています。たとえば、薄暗いところでも明るく撮ることができたり、インカメラも広角で幅広く撮影できたり、ご満足いただけると思います。

そして、第3のこだわりは基本機能の充実。3日間以上の電池持ちに加え、ずっと美しい状態で使用していただけるよう、傷がつきにくい、落下に強いという点も重視しました。

I川:今回、アルミフレームがトピックの一つになっているようですが、デザイン性や強度の面に採用の理由がありそうですね。

吉澤氏:デザイン的に上質感、高級感を出すために、本物の金属を使うことは重要でした。金属独特の冷たさや感触は、やはり樹脂には出せません。また、強度的にもアルミ素材を選んだというのはありますね。

美しいボディに隠された、開発者の試行錯誤

I川:F-03Hのフレームをよく見ると、上下とサイドでパーツが別々なんですよね。

渡邉氏:デザインやアンテナの性能などを検討して、今回はパーツを分けることにしたんです。

I川:サイドフレームのキャップパーツなどはアルミですか?

渡邉氏:はい、キャップにもアルミを使っています。フレームと一体感を持たせることも、全体の高級感、上質感につながっていると思います。

I川:ただ、一つのフレームの中で違う素材を組み合わせるのは難しい感じがしますけど…。

渡邉氏:それが今回のモデルでいちばん頑張った点かもしれないです。別々のパーツを合わせていくのが難しい上に、素材も違いますから。でも、構造的に強度を保ちながら、上質感、高級感があり、手触りの良いボディに仕上げたかった。そのためにはサイドフレームのアルミは譲れなかったですね。

I川:そこまでして、アルミフレームにこだわりましたか。

渡邉氏:お客様がスマートフォンを買われるきっかけになるのは、パッと見た時の印象と手触りだと思うんです。手触りってとても大事だと思うんですよ。
ただ、アルミのような金属は、加工すると尖って角ができやすくなるので、パーツをうまく合わせるだけでなく、角を微妙に面取りして全体を滑らかに仕上げる工夫もしています。

I川:なるほど。いい手触りだと思います。それに、持ったときの丸みや厚みも手にしっくりきます。

渡邉氏:スマートフォンのボディサイズを決める際には、まず、厚さ・幅・長さの3寸法の目標を設定するんですが、今回のようにフレームに丸みを持たせた場合、最適な幅をまず設定し、その幅の中でいかに丸みを持たせるかを考えていきます。丸みがある分、内部の空間は狭くなりますから、そこに構造をどう納めるかが問題なんです。

見た目にはわからないですが、実はこの丸みのあるフレームの下も、内部の空間として利用しているんです。本体の骨組みとフレームがコの字型に噛んでいるような状態です。

I川:かなり複雑な構造なんですね。できあがるまでには試行錯誤があったんだろうなぁ。

渡邉氏:そうですね。丸みをどうするか、デザイナーと何度も話し合いました。お互いにできることをする。そして、最適な「解」を見つける。これは開発の大事なプロセスです。

I川:それからもう一つ。今回、サイドフレームにロゴが刻印されていますが、これは彫り込んであるんですか?

渡邉氏:デザイナーから「刻印のような文字にしたい」という強い要望があって、どういう方法でやろうかと検討しました。機械で削る、プレスするなども考えましたが、今回は高周波レーザーを使っています。表面をわずかに削ることで、文字に触れた時の段差感、刻印のような高級感が出ますし、微細な文字の加工も可能だと考えたからです。

I川:苦労されたのは、どんな点ですか?

渡邉氏:レーザーなので出力の調整を何パターンも試しました。レーザーが強すぎると溝が深すぎたり、色が焦げてしまったり。反対にレーザーが弱すぎて文字の輪郭が出せなかったこともあります。文字一つひとつの形によって見え方の違いにも苦労しました。何度も試作を繰り返して、ようやくできあがったんです。

アルミ+ハードアルマイト加工で、より美しく、強いボディに!

I川:冒頭、強度の点からもアルミ素材を選んだというお話がありましたが、ほかの選択肢は検討されなかったんですか?

渡邉氏:たとえばステンレスを使えば強度的には強いかもしれないですがアルミよりも重いんです。持った時の重さも大事ですから。そのほか表面処理のしやすさや素材の手触り、色の付けやすさなど、いろんな点を考慮してアルミに決めました。

I川:正直、「アルミ=1円玉」というイメージがあって、固いという感じがしなくて…。

渡邉氏:アルミにはいろいろな種類があるんです。1円玉は、ほぼ純アルミ。お金として使われるものなので、硬度よりも軽さや耐食性が重視されていると思います。F-03Hに使用したアルミは、1円玉のアルミと比べて表面硬度が約2.2倍、これは金やプラチナよりも硬いんですよ。また、今回はアルミにハードアルマイト処理を施していますから、1円玉の約3.6倍の硬度を持っていることになります。容易に傷つくような硬さではないですね。

I川:ちなみに、通常のアルマイトとハードアルマイトでは、どう違うんでしょう?

渡邉氏:ちょっと専門的な話になりますが、アルマイト処理というのは、陽極酸化皮膜というのをアルミの表面に作る処理法ですが、ハードアルマイトと通常のアルマイトでは、この被膜の厚みが違います。ミクロン単位の違いでも、被膜の厚いハードアルマイトのほうが、表面の耐傷性や硬度も強くなります。

I川:色についてですが、これは塗装ではないんですか?

渡邉氏:アルマイトは、その処理過程で染料を使い色をつけるのが一般的です。先ほどの陽極酸化皮膜には微細な孔があいていて、そこに染料を入れ込み、最後に封孔処理(孔を塞ぐ)をして色をとじこめるイメージです。
表面塗装ではないので、普通に使ってこすれたり、落としたりしたくらいで色がはげることはありません。

I川:アルミ+ハードアルマイト加工で、強さと美しさの両方を実現しているんですね。

渡邉氏:強度の点でいえば、金属のフレームが落下した時に外れないようにする点でも苦労しましたね。万が一にも外れたら困りますから。表側からは見えませんが、内部で外れないようにネジ固定してあるんですよ。

I川:このボディの中でネジ止めですか?アルミを効果的に使うために、本当にいろんな工夫をされているんですね。

総評

さらりとした手触り、手にしっくりおさまるサイズ感、美しく強いボディ…。ミドルレンジなのにフラッグシップモデルのような上質感、高級感は、さまざまなこだわりの賜物なのだなと、深く納得。そして、アルミフレームが担う役割も大きかったと、さらに納得。アルミフレーム、ウワサ通り凄かったです!